6月8日本会議「リコール住民投票署名」についての個人質問です。

  偽造署名事件になった愛知県知事リコール運動では83%もの無効署名がありました。今回の無効署名は全体の7.3%。
 徳島で過去に行われた住民投票署名と比べてみると、第十堰は14.7%、新町西再開発は10.7%。今回の無効署名は少ない。愛知県の偽造署名事件とは全く違います。
 今回のリコール運動で、縦覧による個人情報の保護について市民から疑問の声が上がっています。総務省でも縦覧制度の見直しを検討されているようです。
 徳島市選挙管理委員会の縦覧基準を見ると、署名簿の複写や撮影は禁止されています。ただし、署名の有効・無効の審査結果に対して異議申出のための書き写しはできるとしていますが、異議申出ができる人は限られています。
○直接請求代表者(今回は久次米尚武さん、多田秀さん)
○署名集めをした受任者
○署名をした人、他人に署名された人など、署名簿に名前がある人
○被解職請求者(今回は市長)も含まれていますが、昨年の6月に市選管の縦覧基準が変更され、市長も異議申出ができるように変わったということです。

【質問】:市長も異議申出ができるよう変更した理由は
【選管局長】:地方自治法第74条の2に被解職請求者(市長)も含まれているため

【質問】:選管が、市長に委任状の発行を認めた理由は
【選管局長】:地方自治法第258条や行政不服審査法第12条に、代理人による異議の申出が認められているため

【質問】:市長の委任状を持った人が、署名を次々と書き写し、その書き写したメモを持ち帰っていることについて、個人情報保護の点から見て非常に問題だと思うが、どうお考えか
【選管局長】:縦覧申込書に、個人情報の保護規定を掲載している
【内藤市長】:異議申出のためのメモであり、人権侵害をしたことも圧力をかけたこともない

 縦覧制度や個人情報保護について、行政法の専門家である成蹊大学の武田真一郎教授のお話しでは、
 地方自治法の名簿縦覧制度は個人情報保護の重要性が認識されていない時代に作られました。選管は当時の状況そのままの考え方に立脚しています。
 現在では個人情報保護法の69条1項により、行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならないと定められています。
 個人情報の保護ということが非常に重要な課題として意識されている現在では、署名簿の公正さを確保するとはいえ、全ての人に公開するというのは、個人情報保護という考え方とバランスがとれていない。
 署名簿の公正さを確保するために、署名簿を見る必要があるのは、署名の審査をする選管以外には、請求代表者、署名を集めた受任者、署名簿に名前がある人(自分は署名した覚えがないという人)も含めて確認のために見ないといけないだろう。これだけでいいはず。
 署名のチェックは基本的に選管の職務であり、市長が見ても公正さの確保に必ずしもつながらないので、今日では個人情報保護法により、市長(ましてその代理人や委任を受けた者)に情報の提供はできないと解釈するべきです。
 仮に市長本人の閲覧を認めるとしても、委任状により第三者に閲覧・書き写しさせることは許されないはずです。第三者の閲覧を認めると、夫のDVのため離れて暮らしている妻子の住所なども知られてしまうことになりかねません。
 市長に委任状の発行を認めたことについて、武田先生のご見解は、地方自治法258条が代理人による異議申出等を認めているのは、弁護士や法律に詳しい者に委任することを想定していると解釈されます。代理人に異議の申出等を委任することと署名簿の個人情報を提供することは別問題です。
 また、先に申し上げたように、市長に情報提供をする必要があるとは解釈されないので、その代理人等に個人情報を提供することはできないし、その必要もないというべきでしょう。
 市長が委任状を出して、自分の支持者に名簿を書き写させるなんていうことは、明らかに個人情報保護という、もう一つの重要な価値を侵害する。
 将来的に法律を変える必要があるけれども、現在の法律がそうなっていても、個人情報保護法もできている。個人情報に携わる公務員としては、委任状で写させるのはまずいんじゃないか。それをメモしてどこかへ持ち去るということは許せないんじゃないかということに、何で思いが至らなかったのかというのが非常に疑問だとおっしゃっています。
 元弁護士の川真田正憲さんは、選管の内部規定(縦覧基準)が法律で認められたリコールの制度を否定する結果につながりかねないと指摘しています。

 選管の縦覧基準は議会を通さなくても変更できるようです。
 市長は、変更された縦覧基準を逆手にとり、自分の支持者に委任状を出し、次々と署名を書き写し、書き写したメモも持ち出しています。
 委任状は、市長側とリコールの会側に出せることになっていますが、同じ委任状でも、リコールの会側から委任状をもらう人は、自分も署名し、受任者になって署名集めをした人たちです。署名をしてくださった方が困るようなことはしません。
 一方、市長側から委任状をもらう人は、署名もしていない、集めてもいないリコール反対派。署名を批判的な目で見る人たちが入れ代わり立ち代わりやってきて、署名を次々書き写せば、威圧的、攻撃的な感じがすると、一般的に考えて分かるでしょう。

【質問】:告発を決めた5月16日の臨時委員会に出席したのは
【選管局長】:選管の委員

 本会議には、選管の稲江委員長は出席されませんので、告発を決めた経緯について質問できません。意見だけ述べます。
 5月22日に徳島大学で行われた「内藤市長リコール署名を考えるシンポジウム」で、元弁護士の川真田正憲さんは、このようにおっしゃっています。
 刑事訴訟法239条に告発の規定がある。その中の2項に、公務員はその職務に関連して犯罪事実を知ったら告発しなければいけない義務があると書いてある。
 告発というのは何かといえば、捜査を始めるきっかけを与えるのが告発。ところが、今回はすでにひと月半以上も前に県警は署名簿を押収している。
 すでに捜査が開始しているので、捜査の糸口でも何でもなく、選管は、事後的に告発と称する申告行為をした。これは、刑事訴訟法上の正式な告発ではない。
 告発義務は警察が何も情報を得ていない段階で告発しなきゃいけないという規定。
 県警は署名簿を押収して、もう知っているのに告発義務は生じない。告発義務はすでにないとおっしゃっています。
 選管がどのような認識であったのか、臨時委員会の議事録を情報公開の請求中ですので、分かりませんが、先ほども申し上げたように、今回のリコール署名は、83%もの無効署名があった愛知県知事リコール偽造署名事件とは違います。
 6万6,000を超える市民が、住所、氏名、生年月日を明らかにしてリコール住民投票に賛同しました。
 市長は「対立姿勢、対立構造にはしたくない。粛々と見守ると」言っていましたが、縦覧での行為は、対立姿勢そのものです。
 市民を代表する市長がとるべき行いではないと思います。
 リコール運動が起きてもしかたがない市長であるということを、市長ご自身が証明しているではありませんか。
 リコール住民投票署名は実現しませんでしたけれども、署名に託された、たくさんの思いに応えるために、独裁的な進め方でなく、市民が主人公の徳島市に変える運動を、市民のみなさんと一緒に今後も続けていくことを申し上げまして、私の質問を終わります。