「取り戻す」って何を?

6月28日 第55回徳島県母親大会に参加しました

弁護士 飯田美弥子(八法亭みややっこ)さんの『憲法噺』より

【与太郎】自民党のポスターには「日本を取り戻す」って書いてありますね。ご隠居、あれはどこから取り戻すってえ話なんですか?

【隠居】お前、いいところに気がついたね。あれには大きな声では言えないけれどね、怖い話があるんだよ。

【与太郎】へえ、どんな?

【隠居】自民党は、改憲草案てえのをインターネットで公開してるだろう? あの中に、すぐにはわからないように答えが隠してあるんだな。

【与太郎】もったいぶらずに教えてくださいよ。

【隠居】改憲草案の最後の条文、102条なんだがな。憲法尊重擁護義務てえ中身を定めているんだが……。

【与太郎】今もあるんじゃありませんか?

【隠居】お前、意外に勉強しているね。今は99条に同じ見出しがつけられているんだが、見出しは同じでも中身は大違い。102条のほうは、1項で国民に、いいかい、国民に憲法尊重擁護義務を負わせるんだな、これが。ね、おかしいだろう? 国民は主権者で、憲法をつくれるはずの人たちなのに、つくる人が守らされるってことになるわけだ。

【与太郎】確かに、意味がわかりませんね。

【隠居】改憲派の小林節教授が、立憲主義の否定だと怒っているのもこの点だな。憲法で国民を縛るって考え方は、もう時代遅れもいいところ。フランス革命の前に戻っちまうってわけさ。

【与太郎】なるほど。で、102条には2項もあるんですかい?

【隠居】そう。今の99条と似て非なる条文になっていて、公務員に憲法尊重義務を課すのは同じなんだが、なんと天皇と摂政を削除している。国民を憲法で縛って、天皇および摂政を憲法から解放する……それが何を意味するかわかるか?

【与太郎】天皇は憲法を守らなくてよくて、国民は憲法を守れってことでしょう?

【隠居】そのとおり。要するに、安倍さんはな、大きな声じゃ言えないが、国民から天皇に、日本の主権を取り戻すって言っているのさ。

【与太郎】えええーっ! そりゃあえらいこった。こうしゃいられねえ。急いでポスターに「国民主権から」って書き込まなきゃ。

みややっこ